毎日数多くの学術論文が出版されています。
科学の進歩は、これらの学術論文の積み上げによってなされています。
そういった中で、
- 科学情報に興味のある一般の方
- 科学関係を学んでいる学生の方
- 科学技術の関係者の方
など、日々忙しい中で、
- 学術論文を探す
- 学術論文を読む
- 学術論文を理解する
といったことが必要な方も多いんじゃないでしょうか。
そういった方は、まず
- そもそも学術論文ってなに?
- 学術論文にはどんな種類があるの?
- 文献や学術雑誌とはどう違うの?
といったことを知っておくことが役立ちます。
そこで本記事では、
学術論文をより効率的に探し、読み、理解したいあなたのために、
- 学術論文とは
- 学術論文の種類
- 文献や学術雑誌などの違い
など、研究の世界の約束事・基本ルールについての基礎知識をまとめたいと思います。
本記事の概要
「学術論文」とは?文献や学術雑誌との違いについてまとめました
学術論文とは
「学術論文」とは、学術的な内容を書いた「論文」になります。
「学術」とは学問のことです。
「論文」とは、
一定の成果を上げた場合に、
その研究内容を公表するための文書となります。
ただし成果ならなんでもいいのでなく、
「これまで知られていないことを新たに明らかにした」
のような新規性が必要となります。
つまり、
学術論文とは、学問についての新規性を持った研究内容をまとめた文書
と言えます。
しかし実は、
「学問についての研究内容をまとめた文書」は、
学術論文だけではありません。
その内容や目的に応じて、いくつかの種類があります。
例えば、
- 学会抄録(会議録)
- 学会発表
- 学術論文
- 学会誌・学術雑誌
- 文献
などの言い方があります。
これらを知っておくと、
知りたい情報に素早くアクセスできるようになります。
これらを以下で説明していきますね。
「学術論文」と「学会抄録」
研究をして、成果が出た場合には、
成果を公表して、同じ分野の専門家と共有します。
共有することによって、その分野の発展に貢献することができます。
公表するには、主に2つの方法があります。
- 「学術論文」として公表する
- 「学会」で発表する
(この他に、特許として出す場合もあります)
学会で発表する場合に出す文書が、
「学会抄録(がっかいしょうろく)」となります。
以下で学術論文と、学会抄録について説明します。
「学術論文」とは
学術論文とは、文書です。
ただし、以下の条件を満たしたものを言います。
- ピアレビューを経た
- 一定の信頼性を担保した
- 新規性のある研究をまとめた
文書と言えます。
- ピアレビューとは?
- 信頼性の担保って?
- 新規性って何?
と思われる方も多いかと思います。
以下で説明しますね。
学術論文を理解するには、学会を知る必要があります。
「学会」とは、同じテーマについて研究している研究者や技術者など専門家の集まり、になります。
例えば、
- がんについての専門家が集まった学会は「がん学会」
- 人工知能についての専門家が集まった学会は「人工知能学会」
といった感じになります。
学術論文は発表する場所があります。
それが「学会誌」になります。
「学会誌」とは、学会が発行する機関紙になります。
では、例えば、がんについての学術論文を書いたら、
がん学会などの学会誌に載せることができるかというと、実はそうではありません。
学会の存在意義の1つは、研究結果の信頼性の担保になります。
世の中では、日々様々な研究結果が出る中で、
- 信頼性があるもの・ないもの
を見分ける必要があります。
しかし、一般の方がそれらを見分けるのは困難です。
そこで専門家が集まる学会に、学術論文を投稿します。
すると、
- 内容が信頼できるものかどうかを専門家によって審査される
という仕組みがあります。
専門家の審査に合格したものだけが、学会誌に載ることができます。
つまり、専門家が審査することで、学術論文の信頼性が担保されるわけです。
この審査のことを「ピア・レビュー」と言います。
「ピア(peer)」は、同僚・仲間の意味で、同じ研究分野の方、といった意味になります。
「レビュー(review)」は、(ここでの意味は)研究内容の妥当性のチェックのような感じになります。
ピア・レビューとは、同じ研究分野の専門家による妥当性のチェック
と言えます。
ピアレビューを通過(合格)すると、
学会誌の中で、自分の研究内容が公表されます。
これが研究成果の報告として公的にみなされる文書になります。
このような過程を経て公表される研究文書が
「学術論文」(学会誌の中での研究成果の発表文書)
ということになります。
学術論文は、専門家の審査を経て合格していることから、
その他の情報よりも信頼性があると考えることができます。
逆に、学術論文でない情報については、
その信頼性について保証がない場合があると考えることができます。
なので、情報の信頼性を考える時に、
- その情報が学術論文を根拠にしてるかどうか
を考えるのが1つのポイントになります。
研究成果の公表方法には、もう1つ方法があります。
「学会発表」や「学会抄録」
研究成果を公表・発表するには、「学会発表」という手段もあります。
学会発表とは、その字の通り、学会で発表することです。
学会で発表するには、
研究内容がマッチする学会を選定して、
その学会の年会などに申し込みをします。
(どの学会も定期的に年会を開いてメンバーで研究結果の報告をします。年に1回など行われています)
学会での発表を申し込む際には、
研究の要点をまとめた要旨を作成し、文書として学会に提出します。
研究の要旨まとめた文書を「学会抄録(がっかいしょうろく)」と呼びます。
これは分野によりさまざまですが、
短い文書(〜約500文字程度など)で、
研究成果の報告として公的にみなされる文書になります。
申し込みをして、審査など通過したら、学会当日に発表を行うことができます。
学会で発表することで、他の専門家の方から、自分の研究内容についてフィードバックを受けることができます。
学会発表についてのやり方などは以下の本などがございます↓
学術雑誌とは
学術雑誌とは、複数の学術論文をまとめて1冊にまとめた雑誌になります。
学術雑誌には、幾つかのタイプの研究文書がまとめられています。
学術雑誌には、
- 学術論文
- 学会抄録
に加えて、
- 系統的レビュー・総説
などを含めたものが1冊にまとまっています。
これを「学術雑誌」と言います。
学術雑誌は、
- 専門家が定期的に新しい成果を知るための雑誌
と言えます。
学術論文や学会抄録は上で説明しました。
3つ目の系統的レビュー・総説について説明したいと思います。
系統的レビュー・総説とは
学術論文や学会抄録は、1つの研究結果をまとめたものがほとんどです。
この他にも、過去から現在までの研究の歴史や動向をまとめた要約された文書があります。
それらをレビュー論文や総説と呼びます。
「系統的なレビュー論文」や「総説」とは、
複数の論文の内容をまとめた論文のことです。
1つのテーマについて、関連する複数の論文をまとめ、
これまでのその研究テーマの歴史や現状を把握しやすくしてくれます。
というわけで、
学術雑誌とは、専門家向けに
- 学術論文
- 学会抄録
- レビュー論文・総説
などを1つの雑誌でまとめているもの
と言えます。
学術内容を効率的に理解する方法とは
以上から、ある専門分野について、
最新の情報を知りたかったら、
- その分野の学術雑誌を調べればいい
ということがわかります。
また、1つ1つの学術論文を読むよりも、
その分野の専門家がまとめてくれた
- レビュー論文を読む
ことで、そのテーマをより効率的に理解することができます。
最後に、よく使われる「文献」について説明します。
「文献(ぶんけん)」とは?
実は、「文献とは」については、
何を文献に含め・何を含めないのか
について、厳密な定義はないかと思います。
分野によって異なり、文系・理系でも大きく異なるように思います。
ここでは一般的な目安としての「文献とは?」についてまとめたいと思います。
一般的に、文献として呼べるのは、
- 研究の参考にできる内容を含んだ文書
と言えます。
冊子や電子版を含めて、どちらも文献と呼べます。
具体的に文献として考えれるものとしては、
- 学術雑誌(学術論文、学会抄録、レビュー論文)
- 学会発表内容
などが考えられます。
この他にも、研究の参考にできる信頼性があるものであれば、
- 書籍
- 報告書
- インターネット情報
などのものも、文献として使える場合があります。
というわけで、本記事では、
学術論文をより効率的に探し、読み、理解したいあなたのために、
- 学術論文とは
- 学術論文の種類
- 文献や学術雑誌などの違い
など、研究の世界の約束事・基本ルールについての基礎知識をまとめました。
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