「ソフトウェア特許」は、他の製品の特許と大きく違う点があります。
通常の製品は開発・製造することがむずかしいので、類似品を製作することが困難です。なので、ライバルとなる相手は限られています。
しかしソフトウェアの場合は、製造することが自体にはコストはほとんどかからず、PCがあれば開発することができます。また、複製することも簡単です。
そのため、ソフトウェアは類似品が出回りやすいと言えます。
なので、ソフトウェアの分野ではアイデアを特許として取得しておく意味が特に大きくなります。
本記事の概要
ソフトウェア特許とは?
「ソフトウェア特許」とは、ソフトウェアに関する特許のことです。ソフトウェアにもいろいろな形態がありますが、たとえば、
- PC・スマホ・タブレットに組み込まれたソフトウェア
- ダウンロードして購入するソフトウェア
- クラウドで実現しているソフトウェア
- ゲームやビジネスなどのパッケージソフトウェア
- 家電製品などに組み込まれたソフトウェア
など、さまざまなものがあります。
ソフトウェア特許は、日本の特許出願のうち約1割弱を占めていて、年間25000〜30000件くらいが出願されています。
ちなみに、ソフトウェア特許は、ソフトウェアが完成してからでないと特許がとれないと思われるかもしれません。じつはそうではなくて、コーディングされていなくても、処理手順を他人に説明できる程度に具体的であれば、出願することが可能です。つまり、ソフトウェア特許の出願は、製品の企画段階で出願可能な場合が多いと言えるようです。
特許になるかどうかは、どう判断するの?
特許になるかどうかの要件は、特許要件と呼ばれます。
①、発明であること
②、新規性があること
③、進歩性があること
の3条件を満たすソフトウェアは特許になる可能性があるわけです。
①、発明であること
発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう(特許法第2条1項)」となっています。
自然法則を利用していることが条件となっていて、人間の取り決めによるものなどは特許になりません。
②、新規性があること
発明である場合、次は新規性があるかを考えます。
考えた本人が思っているだけでなく、社会全体でみて、客観的に新規性があることが求められます。特許出願日より以前に他人がすでに同じアイデアを公表している場合は、新規性を満たさないと判断されます。
ここで注意なのですが、アイデアを考えた本人が出願前になんらかの手段で世間に公表していた場合も、同様に新規性がないと判断されます。なので、学会発表やビジネスショーなどの公の場で発表する場合は、特先に許出願を済ませておくようにしましょう。
(ちなみに、自分で発表した場合には、発表してから6ヶ月以内であれば、新規性喪失の例外として、新規性が失われなかったものとして扱ってもらえる場合もあります)
③、進歩性があるか
発明であり、新規性がある場合には、進歩性を考えます。
進歩性とは、これまでの技術と比べて、技術的進歩がみられるかということです。またその進歩が、通常「誰でも容易に考えられる程度」のものの場合には、進歩性はないと判断されるところが注意です。その分野の専門家ならば簡単に思いつくものであれば進歩性はないと判断されます。
ソフトウェアの進歩は早いですが、進歩性は、出願時の状況において審査されます。出願時の技術的状況をみて、著しい技術的進歩があったと考えられる場合に進歩性が認められます。
ちなみに、特許が取れない原因の8割程度はこの進歩性がないという理由だということです。
あなたが特許出願されるときには、進歩性の判断をより慎重に行うとスムーズに受理される確率が高まるのではないでしょうか。
特許について知っておくべきこととは?
その他にも特許について、知っておいた方がよいことがあります。
- 特許は1番始めに出願した人が権利者になるという「先願性」
- 特許権者はだれになるのか?
- 特許権の効力は?
- 特許が侵害されたときの「差止請求権」や「損害賠償請求権」とは?
- 特許権の「技術的範囲」とは?
- 「直接侵害」や「間接侵害」とは?
- 他人の特許に基づいて新しい発明「改良発明」をするには?
- 特許の権利と取得するには?調査から登録まではどうするの?
といった様々なことがあります。はじめて学ぶ方は
多いなぁ〜
と思われるかもしれませんが、1つ1つ見ていけば難しいことはありません。
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本書の構成は以下の通りです
はじめに
序章 本書の構成・特許・著作権・商標権
第1章 ソフトウェアと「特許権」
1−1、ソフトウェア特許
1−2、ソフトウェアの特許権とは
1−3、特許権の技術的範囲(効力の及ぶ技術的な範囲)
1−4、他人の特許権との関係
1−5、権利を取得するために(調査から登録まで)
1−6、外国における権利取得
Column 1−1、ソフトウェア特許とビジネスモデル特許の関係
Column1−2、ソフトウェアが完成していなければ特許は取れない?
Column1−3、リバースエンジニアリングとは?
Column1−4、”とくがん”、”とっかい”、”とっこう”とは?
Column1−5、特許調査の手法
Column1−6、権利者が自分で権利範囲を決める?
Column1−7、フェアプレーが求められる米国特許
Column1−8、特許審査ハイウェイ
第2章 ソフトウェアと「著作権」
2−1、著作権は何のためにあるのか
2−2、著作権とはどんな権利か
2−3、だれが権利を持つのか
2−4、他人の著作物を利用した著作物について
2−5、申請
2−6、権利はいつ消滅するか
2−7、外国での保護
Column2−1、所有権と著作権との関係
Column2−2、デジタル化権
Column2−3、インターネット上でのファイル交換
Column2−4、映画はだれのものか?
PRECEDENT 2−1、ポパイ事件
第3章 ソフトウェアと「商標権」
3−1、商標権とはどのような権利か
3−2、権利を取得するために(調査から登録まで)
3−3、外国における権利取得
Column3−1、立体商標と意匠との関係
Column3−2、画像デザイン(ユーザーインターフェース)の保護(意匠法)
Column3−3、アイコンの保護(商標法)
Column3−4、アイコンの保護(意匠法)
Column3−5、分離譲渡の注意点
第4章 「特許権」を有効に活用する
4−1、模倣品に対する対策
4−2、模倣品や模倣サービス排除の手順
4−3、ソフトウェア特許の戦略と活用
4−4、ビジネスモデル特許
4−5、ソフトウェア特許・ビジネスモデル特許の問題点
Column4−1、特許権がなくても排除できる場合
Column4−2、特許権の技術的範囲
Column4−3、電子マネー特許
Column4−4、知的財産権高等裁判所
Column4−5、実用新案法の改正
PRECEDENT4−1、BBS事件(真正商品の並行輸入)
PRECEDENT4−2、State Street Bank 事件
PRECEDENT4−3、米国ソフトウェア企業を騒がせたFreeny 特許
第5章 「著作権」を有効に活用する
5−1、模倣品を排除するには
5−2、著作権が発生しているか
5−3、相手方にどのように働きかけるのか
5−4、著作権を有効に活用するために
Column5−1、新聞の見出しは著作権?(ヨミウリオンライン事件)
Column5−2、電子透かし技術
Column5−3、模倣品の解析行為は許されるか
Column5−4、違法アップロードされたものをダウンロードすると
Column5−5、海賊版ソフトウェアの取締り
Column5−6、動画投稿サイト
Column5−7、コピープロテクト解除機器の規制
Column5−8、書籍購入者によるデジタル化処理について
Column5−9、ダウンロード販売と補償金
Column5−10、権利制限規定の見直し
Column5−11、クリエイティブ・コモンズとは
Column5−12、クリックオン契約
Column5−13、プロバイダ責任制限法
Column5−14、ハウジングサービスについて
PRECEDENT5−1、ゲーム画面の翻案かが争われた事件
PRECEDENT5−2、中古ソフトの販売について
PRECEDENT5−3、他社のゲームデータを書き換えるプログラムを販売したら
PRECEDENT5−4、OSS(Open Source Software)と著作権
第6章 「商標権」を有効に活用する
6−1、模倣品排除の概略
6−2、模倣品排除の詳細な手順
6−3、商標権を有効に活用する方法
Column6−1、商標の類似判断(称呼の類否)
Column6−2、越境侵害への対処法(特に、商標に関して)
Column6−3、インターネット上の模倣とその対策
PRECEDENT6−1、楽天市場(インターネットショッピングモール運営社)事件
第7章 侵害警告がきたら
7−1、どこに相談に行くか
7−2、特許の場合
7−3、著作権の場合
7−4、商標の場合
7−5、裁判外紛争解決(ADR)
Column7−1、他社特許のウォッチング
Column7−2、不正使用の取消審判(”My Tube” vs “You Tube”)
PRECEDENT7−1、一太郎事件
第8章 社内制度の整備
8−1、社内制度を整備するために
8−2、特許について
8−3、著作権について
8−4、商標について
Column8−1、知的財産の価値評価
Column8−2、App Store と Android Market(現Google Play)へのアプリ提供
Appendix
A-1、職務発明規定の典例
A-2、発明届出書の書き方
A-3、出願書類の例(特許願、明細書、特許請求の範囲、図面、要約書)
A-4、公開公報の例(抜粋)
A-5、特許掲載公報の例
となっています。
自分が出願する際に、なにを、どのような手順でやっていけばいいかを具体的に学ぶことができます。
また、コラムでは間違いや勘違いしやすいところを説明してくれていて、概念の整理に役立ちます。
本書の最後のAppendixだけで70ページあり、その中では「届け出書類の具体例」が豊富に示されています。はじめての方でも出願書類の作成をしっかりサポートしてくれる1冊です。
わたしは知的財産管理技能士の資格をもっていますが、特許・商標・著作権の内容がシッカリ簡潔にまとめられているなぁと思います。
それに加えてソフトウェアに関する例を豊富に与えてくれていて、じっさい出願する際にも役立つ1冊です。
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