データ主導の意思決定が求められるこの時代に、堅牢で効率的なデータ管理システムを持つことは極めて重要です。
そのようなソリューションの1つとして、近年人気を集めているのがデータレイクです。
データレイクは、企業が大量のデータを一元的に保存し、分析するためのソリューションです。
データレイクは、構造化されているか否かに関わらず、あらゆる種類のデータを収集し、その原形のまま保存します。
これにより、データの取り扱いが柔軟になり、ビジネスの意思決定に必要な洞察を得るための分析が可能になります。
データレイクの利用は、ビッグデータの時代において、企業が競争力を保つための重要な戦略となっています。
しかし、データレイクを効果的に活用するためには、適切なデータ管理とガバナンスが必要となります。
これらを適切に行うことで、データレイクは企業にとって強力なツールとなります。
この記事では、データレイク・ソリューションとは何か、そのメリット、導入の際の注意点、そして市場で入手可能な人気のソリューションについてご紹介します。
本記事の概要
【データレイク ソリューション】 あなたのビジネスを加速させるデータレイク・ソリューションの包括的ガイド
データレイク・ソリューションとは?そのメリットは?
データレイクとは、構造化・非構造化データをあらゆる規模で保存できる一元的なリポジトリのことです。
すべてのデータへのアクセスポイントを一元化し、管理、分析、洞察の抽出を容易にします。
データレイクを使用すると、以下のようなメリットがあります。
1. 高度な分析が可能になる
データレイクは、構造化されたデータだけでなく、非構造化データや半構造化データも一元的に保管できるため、多種多様なデータソースを統合して管理することが可能になります¹。これにより、高度な分析の土台となります。
2. 高度な分析と機械学習の強化
データレイクを活用することで、未加工データをSQL分析、データサイエンス、機械学習に対応した構造化データに低レイテンシで変換できます。
3. データの一元化、統合、カタログ化、業務効率の向上
異なるソースからのデータを一元的に保管することが可能です。これにより、データを必要とする部門や組織が必要な情報にすばやくアクセスできるようになり、業務効率の向上が期待できます。一元化されたデータレイクにより、データサイロに起因する問題(データの重複、複数のセキュリティポリシー、コラボレーションが困難など)が解消されます。
4. セルフサービスツールの提供によりデータを民主化
データレイクは柔軟性に優れており、異なるスキルを持ち、さまざまなツール、言語を使用するユーザーがそれぞれの分析タスクを同時に実行できます。
5. クラウドサービスの活用
クラウドサービス上で提供されるデータレイクサービスは、企業が自前で大規模なインフラを構築・運用する必要性を低減し、より手軽にビッグデータを活用するための基盤を提供しています。
6. コスト削減
データレイクは、規模や形式にかかわらず全てのデータを一元的に保存できるため、データの成形作業にかかる負担を軽減できます。
7. ビジネスの成功に直結
データレイクを用いることで、例えば、顧客の購買履歴や行動履歴などのデータを統合的に分析することで、新たなマーケティング施策の立案につなげることができます。
これらのメリットを最大限に活用するためには、データレイクの適切な管理と運用が重要となります。
データを一元管理することで、あなたは、情報の検索時間を短縮し、データに基づく意思決定をより迅速に行うことが可能です。
他のビッグデータソリューションとの違いは?
データレイクと他のビッグデータソリューション、例えばデータウェアハウスとの主な違いは、データの保存と処理の方法にあります。
1. データの形式
データウェアハウスでは、データは事前に定義されたスキーマ(構造)に従って保存されます。
一方、データレイクでは、構造化、半構造化、非構造化のすべてのデータをその原形のまま保存します。これにより、未知の問い合わせや分析に対応する柔軟性が提供されます。
2. ストレージコスト
データレイクは、大量のデータを比較的低コストで保存することが可能です。一方、データウェアハウスのストレージコストは通常、より高価です。
3. データの処理
データウェアハウスでは、データはETL(Extract, Transform, Load)プロセスを経て保存されます。
一方、データレイクでは、データはELT(Extract, Load, Transform)プロセスを経て保存されます。つまり、データは変換されずにロードされ、必要に応じて後から変換されます。
4. リアルタイム分析
データレイクは、リアルタイムのデータ分析とストリーミング分析を可能にします。
一方、データウェアハウスはバッチ処理により最適化されています。
これらの違いを理解することで、ビッグデータソリューションの選択がより明確になるのではないでしょうか。
それぞれのソリューションが提供する機能を比較して、それがあなたのビジネスの要件とどのように一致するかを検討するのがポイントです。
データレイクとデータウェアハウスは、しばしば補完的な役割を果たし、共に使用されることもあります。
それぞれのソリューションを活用して、あなたにとって最適なシステムを構築することが重要となります。
データレイク・ソリューションは、どう選べばいいの?
データレイク・ソリューションの導入には、慎重な計画と検討が必要です。
ここでは、留意すべき主な検討事項をご紹介します。
1. データガバナンス
データガバナンスとは、組織内でのデータの管理方法を定め、利用可能性を保証し、活用するための枠組みです。
これには、データの品質と整合性の確保、データによる意思決定の支援、データの安全性の確保、データ活用の促進などがが含まれます。
データレイクのソリューションを導入する前に、明確なデータガバナンスの方針と手順を確立することが不可欠です。
2. データセキュリティ
データレイクのソリューションを導入する際には、データセキュリティを最優先する必要があります。
これには、静止時および転送時のデータの暗号化、アクセス制御ポリシーの導入、定期的なセキュリティ監査の実施などが含まれます。
セキュリティに特化したデータレイク(セキュリティデータレイク)もございます。
セキュリティデータレイクは、ログファイルやその他のセキュリティデータを格納するために設計されたデータレイクです。
セキュリティデータレイクは、セキュリティデータの保存と分析を一元化することで、脅威の検出と脅威ハンティングのアクティビティをサポートします。
3. データの取り込み
データの取り込みは、データレイク・ソリューションの重要な要素です。
データレイクは、様々なソースからのデータをリアルタイムで取り込むことが可能です。
これにより、データが生成された瞬間からその情報を活用することができます。
また、データレイクでは構造化データ、半構造化データ、非構造化データを混在させることができます。
これにより、テキスト、画像、動画などの非構造化データや、JSON、XMLファイルなどの半構造化データも含め、あらゆるタイプのデータを「そのまま」格納することができます。
もちろんデータの損失や破損を引き起こすことなく、データを効率的かつ正確に取り込むことも不可欠です。
4. データ処理・データ分析
データ処理は、あらゆる規模で大量のデータを処理できるように設計されなければメリットが半減してしまいます。
このためには、分散コンピューティング技術で実現可能です。
また、データレイクに格納されたデータは、データサイエンス、機械学習、ビジネス分析など、データを分析する上で様々な目的で利用することができ、あなたの迅速な意思決定を支援します。
人気のデータレイク・ソリューション
市場には、人気のデータレイク・ソリューションがありますので、いくつかご紹介します。
Google Cloud
Googleには「Google Cloud」を利用したデータレイクソリューションがあります。
以下にその主な特徴と機能を詳しく説明します。
Google Cloud Storage(GCS)
Google Cloud Storageは低コストのオブジェクトストレージを提供します。
データの保存にあたってはParquetのようなオープン(OSS)フォーマットを、処理エンジンにはSparkなどが利用可能で、Delta、Iceberg、HudiのようなフレームワークをDataprocを通じて使用することで、トランザクション処理も実現できます。
BigQuery
BigQueryは、サーバーレスのクラウドデータウェアハウスでペタバイト級のデータの分析を可能にするANSI SQL互換のエンジンを提供します。
Dataproc
DataprocはHadoopとSparkのマネージドサービスで、さまざまなオープンソースフレームワークの使用を可能にします。
Vertex AI
Vertex AIは大規模なMLモデルを、限られたコーディングで構築可能な統合MLOpsプラットフォームです。
Dataplex
Dataplexは、Google Cloud Storage(オブジェクトストレージ)とBigQuery(高度に最適化された分析用ストレージ)のデータを横断する、メタデータ主導のデータ管理ファブリックを実現します。
組織は、Dataplexを使用して、レイクハウスでデータの作成、管理、保護、整理、分析をすることが可能です。
これらの機能により、Google Cloudは、データレイクとデータウェアハウスの利点を組み合わせたデータエコシステムを実現し、企業のデータ運用の中核をなす2つの要素を統合しています。
これにより、データから最大限の価値を得られるよう、組織がワークロードやペルソナに応じて最適化された異なる実行エンジンを、同じデータ層で実行することが可能になっています。
このように、Google Cloud では、大量のデータを保存・分析するためのスケーラブルで高性能なソリューションを提供しています。
Amazon S3
Amazon S3(Simple Storage Service)は、アマゾン ウェブ サービス (AWS)が提供するクラウドストレージサービスです。
以下に、その主な特徴と機能を詳しく説明します。
耐久性と可用性
Amazon S3は、データやファイルをオンラインで保存し、必要なときにアクセスできるようにするための便利なツールで、耐久性と可用性が非常に高くデータの中長期保存やバックアップに最適なストレージです。
スケーラビリティ
Amazon S3は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
データ管理
Amazon S3には、特定のビジネス、組織、コンプライアンスの要件を満たすために、データへのアクセスを最適化、整理、設定できる管理機能があります。
ストレージ管理およびモニタリング
Amazon S3のフラットで非階層な構造や、数多くの管理機能は、あらゆる規模の企業や業界のお客様が、ビジネスやチームにとって価値のある方法でデータを整理する上で役立っています。
バージョン管理とレプリケーション
Amazon S3は、データのバージョン管理を維持し、偶発的な削除を防ぎ、同じまたは別のAWSリージョンにデータをレプリケートするのに役立つ機能もサポートしています。
これらの特徴と機能により、Amazon S3は、データレイク、ウェブサイト、モバイルアプリケーション、バックアップおよび復元、アーカイブ、エンタープライズアプリケーション、IoTデバイス、ビッグデータ分析など、広範なユースケースのデータを容量にかかわらず、保存して保護することができます。
このように、Amazon S3はスケーラブルで耐久性のあるオブジェクト・ストレージ・サービスで、大量のデータの保存と分析に費用対効果の高いソリューションを提供しています。
Microsoft Azure Data Lake Storage
Microsoftには「Azure Data Lake」というデータレイクソリューションがあります。
以下にその主な特徴と機能を詳しく説明します。
Azure Data Lake Storage
これはデータレイクを構築するためのストレージサービスで、ペタバイトを超えるファイルを数十億個も保存することができます。
Azure Active Directory(Azure AD)とロールベースのアクセス制御(RBAC)でデータを認証し、暗号化や脅威に対する高度な対策などのセキュリティ機能でデータを保護します。
Azure Data Lake Analytics
これはビッグデータの処理を簡素化するオンデマンド分析ジョブサービスです。
U-SQL、R、Python、.NETを使用して、ペタバイト規模の超並列データ変換処理プログラムを容易に開発および実行できます。
Azure HDInsight
これはオープンソースの技術を活用したクラウド上の大規模分析サービスです。
Azure HDInsightでは、Azure環境でHadoop、Apache Spark、Apache Hive、LLAP、Apache Kafka、Apache Storm、Rなどのオープンソース・フレームワークを利用できます。
これらの機能により、さまざまな種類のデータを格納し、複数のプラットフォームと言語で処理/分析を簡単に実行できます。
また、Azure Data Lakeは、データの形式に関係なく、生データをそのまま格納していくため、今後どのように使われるかわからないデータでもとりあえず収集し、蓄積しておくことができます。
これにより、ビジネス環境の変化に柔軟に対応することが可能となります。
このように、Microsoft Azure Data Lake では、セキュアでスケーラブル、かつコスト効率に優れたデータレイク・ソリューションで、大量のデータの保存と分析を可能にしています。
Oracle Cloud Infrastructure
Oracleにはデータレイクソリューションがあります。それはOracle Cloud Infrastructure(OCI)を使用して、安全でコスト効率に優れ、管理が容易なデータレイクを構築することができます。
OCI上のデータレイクは、お客様が希望するデータウェアハウスや分析、またデータカタログ、セキュリティ、観測サービスなど、他のOCIサービスと緊密に統合されます。
また、OCI Data Integration、OCI GoldenGate、またはOCI Streamingを利用してデータを取り込み、OCI Object Storageに保存します。
さらに、OCI上の一元的なデータレイクは、
- Oracle Autonomous Data Warehouse
- MySQL HeatWaveなどのデータベース
- Oracle Analytics Cloudなどの分析および機械学習 (ML) ツール
- Apache Sparkなどのオープン・ソース・プロジェクト
など、お好みのツールと統合できます。
また、OracleはOCIデータレイクと呼ばれるフルマネージドのデータレイク・サービスを開始します。
これにより、運用コストの削減、スケーラビリティとセキュリティの向上、そして既存のデータをすべて1か所に組み込むことの実現が期待できます。
具体的な機能としては、一元化されたメタデータによる一元的な把握、2層のセキュリティ、あらゆる形式でのデータの相互運用性の確保、移植性に関するオープンなデータ形式のサポートなどがあります。
これらの機能により、データから新しいインサイトを獲得し、予測を行い、運用上のオーバーヘッドを低減し、カスタマー・エクスペリエンスを向上させることができます。
IBM Data Lake
IBMにもデータレイクソリューションがあります。
IBM Data Lakeと呼ばれ、非常に膨大なデータ量を管理するための中央リポジトリーとして機能します。
IBMのデータレイクは、ネイティブ・フォーマットで構造化データ、半構造化データ、非構造化データを収集し、分析するための基盤として機能します。
これにより、新たな洞察、予測の精度と最適化の向上を促進します。
IBMのデータレイクは、アプリケーション、分析、AIを強化するために、オープン・クラウドのデータレイク内にあるあらゆるデータを活用します。
また、データレイクはデータ・ファブリック・アーキテクチャーの一部として構築でき、どこに存在するかにかかわらず、適切なタイミングで、適切なデータを提供します。
データファブリックとは、インテリジェントな自動システムを使用して、さまざまなデータ・パイプラインやクラウド環境のエンドツーエンドの統合を促進するアーキテクチャーです。これにより、企業内のデータが統合され、一元的に管理できるようになります。
さらに、IBMはデータウェアハウスやデータレイクに対する既存の投資から、さらに多くの成果を獲得できるように、柔軟性を向上させるために、アクセス可能なデータの種類を増大させたデータレイクハウスの構築を推進しています。
IBMのデータレイクソリューションは、データのライフサイクルにわたってIBMやサード・パーティーのサービスを使用して、適切なデータを、適切なユーザーに、適切なタイミングで提供します。
これにより、データのカタログ化、キュレーション、検索、および検出を強化するデータ基盤を構築し、維持することが可能になります。
また、IBMのデータレイクソリューションは、ハイブリッド・マルチクラウド・アプローチにより、何年も前の記録からリアルタイムのデータに至るまで、あらゆるデータにアクセスします。
これにより、複数のデータ・リポジトリーに分析を統合し、拡張して、大規模な革新と最適化を促進します。
そして、世界最高レベルの基幹業務環境での稼働を支援するIBMのデータレイクの拡張性、安全性、回復力、柔軟性を活用することができます。
まとめ
この記事では、データレイク・ソリューションとは何か、そのメリット、導入時の注意点、そして市場で入手可能なソリューションについて解説しました。
データレイク・ソリューションは、すべてのデータへのシングル・アクセス・ポイントを提供し、管理と分析を容易にします。
データは生の形式で保存されるため、データ処理や分析の柔軟性が高まり、あらゆる規模で大量のデータを扱うことができるため、
データを活用してあなたのビジネスを加速させる手段として重要です。
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